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小説やドラマ、映画、時にはスポーツのレビューを書くつもりです

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 「イノセント・ゲリラの祝祭」   海堂尊   (宝島社文庫)

「田口・白鳥シリーズ」の第4弾です。
ただ、田口・白鳥は登場しますが、今までのように事件が起こってそれを二人が調査して解決するというスタイルではなく、「医療事故調査委員会創設検討会」(ちなみに正式名称は「診療関連死死因究明等の在り方に関する検討会」)の会議における攻防がメインに描かれています。
なので、私のようにミステリーを期待して読むと肩透かしを食いますが、論戦は論戦で楽しめますし、日本の死因究明制度の勉強もできるので読んで損はありません。
私としては火喰い鳥・白鳥の傍若無人の活躍を楽しみたいので次作「アリアドネの弾丸」に期待します。


いつものように他の作品とリンクしているので、ミステリ好きの人間にとっては他の作品を楽しむための繋ぎだと思っても良いかもしれません。

「極北クレイマー」で描かれる極北市の手術中に妊婦が死亡した事件は新聞記事として数回登場しますし、
その事件で逮捕される三枝久広の母親が経営し、「ジーン・ワルツ」「マドンナ・ヴェルデ」の舞台となるセントマリアクリニックの前を田口と白鳥が通り過ぎます。
短編「東京23区内外殺人事件」も文庫化する段階で本作に組み込まれたようです。
もちろん、次作「アリアドネの弾丸」の前振りにもなっています。

「桜宮サーガ」と呼ばれる作品群を楽しむためには時系列に作品を読んでいくと、より楽しめるので、田口・白鳥シリーズを軸に他の作品に跳ぶことをおすすめします。

次作「アリアドネの弾丸」が7月からドラマ化されるみたいで、本作が跳ばされる形になりました。
まあ、田口・白鳥が活躍せず、舞台もほぼ会議室となるのでドラマにしてもおもしろくはなりようがないから当然ですね。
病院が舞台にならないので「ジェネラル・ルージュの凱旋」みたいにオリジナルストーリーも挟めませんし。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」はオリジナルストーリーの部分が大きかったせいか、「チーム・バチスタの栄光」のようなミステリーとしての緊張感があまりありませんでした。
おかげで原作を後から読んでも楽しめましたが。
今回もつい期待していましますが、期待はずれにならないことを祈ります。
オリジナルでもいいから白鳥圭輔を暴れさせてくれたらいいのですが。


気になったこと

海堂さんは姫宮くんを徹底して「田口・白鳥」シリーズには登場させないつもりらしい。
いつも会話の中で潜入の準備をしていることが触れられるだけ。
田口と姫宮が出会い、白鳥に関する愚痴を語り合えるのはいつの日か。
彼らが出会う時、それはこのシリーズが終わる時かもしれませんね。

他の気になったことは、ややネタバレを含むので、つづきでお読み下さい。

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 「東京島」  桐野夏生  (新潮文庫)

実際にあった事件をモデルとしており、映画化もされているので、以前から気になっていたので買ってみました。
桐野夏生は「OUT」「リアルワールド」を既読。「リアルワールド」はニュージーランドのさほど大きくない町の本屋で英語版をたまたま見つけ、日本の本に飢えていたので買って読んだ。二週間くらいかけて読んだかな。
裏表紙に谷崎潤一郎賞を受賞とあるが、この賞ってどんな賞なんでしょう?
大江健三郎や安部公房が初期の受賞者にいるので純文学系かな、と思ったら井上ひさしや筒井康隆も受賞しているので私にはよくわかりません。ジャンルにこだわってないのかな。


本作を読んで思ったのは、桐野夏生は私には合わない、ということ。「OUT」「リアルワールド」での登場人物たちの壊れ方、グロい描写、がどうにも受けつけられないなぁ、と思いながらもラストが気になって頑張って最後まで読みましたが、救われないラストで気分が沈んでしまいました。緊張感がある場面は楽しめるのですが、どんどん悲劇的な方向に話が展開すると自分の気分まで沈んでしまいます。私が小説に求めるのはエンタテイメントとしての楽しさです。登場人物のキャラクター、展開やトリックの意外性、そういったものを楽しむために小説を読むのです。
人生や社会について考えるために読むのではありません。ですから私は純文学系には全く興味がありません。
桐野夏生は純文学系ではありませんが、読んでいて楽しくなる作家ではありません。
今後、桐野夏生をよむことはない可能性大です。



以下、映画に関して

映画では、なぜに清子役に木村多江を使ったのでしょう。知名度が上がってきた頃だったので使いどきだったのかな。
ある程度人気のある役者を使わないと集客に響くのはわかりますけど、清子が美人になってしまうと原作と全くの別物になってしまいますよね。
男達が群がるのが当然に感じられるので、男達が壊れているようには感じられなくなります。
私のイメージとしては柴田理恵かな。首から下なら熟女好きには受けが良さそうですし。と思ったらもう52歳みたいなので年齢オーバーですね。
他には年齢は合わないけど、森三中の黒沢かずこなんていかがでしょ。ちょっと太り過ぎだけど、少し絞ればいいかな、と。
黒沢かずこって、いつか化けそうな気がするんですよね。かなり奇抜なキャラで売っていますが、誰かがうまいこと彼女に合うポジションで使えば役者としてブレイクしそうな気がするんですよね。
松山ケンイチと一緒に出ているCMなんかすごくいい感じですし。
誰か彼女を使ってみてくれ~。

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 「神南署安積班」   今野敏    (ハルキ文庫)

アマゾンで横山秀夫の作品を評価したらオススメに入ってきて以来、気になっていた安積班シリーズ。
シリーズを通して初めて読むのでかなり期待していました。

とにかくものすごく読みやすいのですぐに読み終わります。一つ一つも短いのでトイレで読むのにいいなぁ、と思っているうちに読み終わってしまいました。

横山秀夫のような緊張感があって、意外性のある展開なのかな、と思っていたら全然違いました。
短めの短編が9つ。トリックやサスペンスではなく、登場人物たちのキャラクターを楽しむタイプの小説ですね。
とてもライトで、ドラマになっているのを知っているからか、連続ドラマを見ているような気になりました。
シリーズ全体がこういう雰囲気なら他に読みたいものがない時に読むって感じになるかな、と思ったのですが、 解説を読んだらシリーズ初の短編集で、どうやら特殊なものから読み始めてしまったようです。
ただ、この作品から読んでも全く問題なく、一つ一つの作品ごとに安積班の面々や交通課の速水のキャラクターが紹介されていくのを楽しめました。


村雨や須田に比べて黒木や桜井の描かれる部分が少なく、特に黒木はセリフもほとんどなかったのでちょっとキャラがつかみきれず、逆に気になりました。一流のスポーツ選手を思わせる、とあるのですが具体的に描かれる場面もなく、とにかく冷静なキャラなのがわかるだけで、どの辺がスポーツ選手っぽいんだぁ、と気になって仕方がありません。
また一流のスポーツ選手と言ったってさまざまなタイプがいるだろうし、わざわざ登場人物紹介に記述しなくてもいいのではないか、と思いました。
まあ他の作品を読んだらわかるのかもしれませんね。


ドラマの方は見ていないのですが、ドラマ化しやすいだろうなぁ、と思います。
本作に関しては脚本いらないんじゃないかと思うくらい。
ドラマのホームページを見たらキャストがイメージと違っていてちょっとガッカリ。
安積が佐々木蔵之介だということだけは知っていたので、安積は蔵之介さんの顔を思い浮かべながら読みました。
速水は絶対に北村一輝。ちょっと「ガリレオ」にイメージが引っ張られているかもしれませんが、上司に媚びず、部下の人望が厚いイメージにピッタリ。どこかで制服警官の役してましたっけ?
村雨は36歳ですが40過ぎに見えるくらい渋いイメージだったので中村俊介はないなぁ。
もっとゴッツいイメージです。
須田は塚地でもいいですが、もっと背が高いイメージですね。178cmくらい。ちょっとずんぐりした感じ。
黒木はなぜか背が低いイメージでした。165cmくらい。俳優はイメージできませんでしたが。賀集は桜井の方が合うなぁと思います。
桜井は180cmくらいでガッシリしたイメージがあったのですが、情けない場面もあったのでガッシリはしていないのかな。でも山口翔悟ではないでしょう。
黒谷友香が出演しているのは知っていたので、女性刑事がいなかったので黒木を女性にしたのかな、と思っていたら違いましたね。たぶんオリジナルキャラなのですね。
安めぐみが山口由紀子を演じているのには驚きましたね。あんなにホンワカしている安さんが妖艶で魔性の女っぽい山口を演じているとは。黒谷友香の方が雰囲気は近いと思うのですが。菊川怜なんていかがでしょ。
とりあえず、演技している安さんを見た記憶がないので、今度の放送を見てみようかと思います。

この次の作品から新ベイエリア分署に舞台が移るようなので、まずは旧ベイエリア分署と残りの神南署ものを読んでしまいたいと思います。


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さすが江戸川乱歩賞といったところでしたね。

13階段」 高野和明  (講談社文庫)

アマゾンのおすすめランキングに入ってくるのでずっと気になっていたのですが、先日ブックオフの105円コーナーで見つけたので買いました。
最近、直木賞よりも江戸川乱歩賞の方が自分の好みに合うものが多いことに気づきまして、気になる作家で裏表紙に江戸川乱歩賞とあったものは迷わず買うようにしています。

13階段」というタイトルが示すとおり、死刑にまつわる話です。
ただ、13階段というのは死刑の代名詞のように思われますが、死刑執行台に13階段を使っていたのは主に欧米諸国でやはりキリスト教が関係しているようです。日本では階段がなく、部屋の中2階のような高さの床が開いて半地下の部屋に落ちる形式だそうです。

二度の死刑執行経験のある元刑務官・南郷と傷害致死で2年服役していた青年・三上が冤罪が疑われる死刑囚の冤罪を証明するために調査をする話です。この死刑囚が、事件が起こった時にバイク事故で頭を強く打ったため、事件前後の時間の記憶を失っていることが問題となります。記憶がないために状況証拠に対して反論することができずに死刑が確定しまったのです。
冤罪の証拠と真犯人を探す調査を軸に二人の過去を絡めて話しが展開していきます。特に三上は調査の舞台となる町に高校時代、当時の彼女と旅行で訪れていますが、まさにその時に冤罪となる事件が起きています。その旅行の時に何が起きたのかが明かされないまま話が進むので、読者も南郷と同じように疑念を持ちながら読み進むことになります。
 
私はとにかく先を読みたくさせる著者の筆力に感心しました。
緊張感がずっと続くわけではありませんが、二人が立てた四つの仮説を一つ一つ検証していき、ジリジリと真相に迫っていく、その過程が興味を引きつけます。次は何が明らかになるのだろう、と気になるのです。
 
私はなかなか読むのを止めることができず、結局2回で全部読んでしまいました
翌日に大事な用がある時には読まないようにお気をつけを。

本作はミステリーとしてのおもしろさもさることながら、日本の死刑制度の勉強にもなります。
死刑制度について考えるきっかけにもなるので多くの人に読んでもらいたい作品ですね。
死刑囚についてもっと知りたい方は「モリのアサガオ」もよいかもしれませんね。
私はドラマの雰囲気がなぜか合わなかったのですぐにリタイアしてしまいましたが。


つづきの方には私が気になった点を具体的に述べているので、未読の方は読まないようにして下さい。 

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「鼓動-警察小説競作」(新潮文庫)  大沢在昌、今野敏、白川道、永瀬隼介、乃南アサ 著

最近、この本のようなオムニバス形式の本が好きで、新たなお気に入り作家を探して楽しんでいます。

警察小説の名手の共演となっています。私は大沢在昌と乃南アサは読んだことがありましたが、他の作家は初めてでした。長さにとても差があり、後に行くに従って長くなります。


「雷鳴」 大沢在昌

彼の代表作「新宿鮫」の鮫島が登場します。もともと朗読用に書いたもので、とても短くなっていますが、短い中でしっかりと展開があり、ラストも鮮やかで切れのある作品となっています。
最近、「アルバイト探偵」シリーズを読んで大沢在昌に失望感を覚えていたところだったので、やはり鮫を使えばいいものを書けるのだ、と見直しました。「新宿鮫」は第1作と最新作を「ほぼ日」で読んだだけなので、他の作品も読んでみようと思います。


刑事調査官」 今野敏
ドラマ化もされている安積班シリーズで有名な今野敏の作品です。彼の作品は未読なので、この本と一緒に買った安積班シリーズ第1作を読んでみようと思います。
この話は中堅の刑事と新任の女性心理調査官を軸にベテラン刑事調査官が彼らをサポートしながら事件解決へと向かいます。この中堅の刑事は長いものに巻かれるタイプで捜査会議などでも思い切った発言をせずに無難に過ごしていました。しかし、今回の事件を通して刑事調査官に背中を押されながら一歩踏み出します。
一人の刑事の成長の物語です。
この話に続編があるか知りませんが、登場人物たちのその後が知りたいなぁ、と思います。


「誰がために」 白川道
少年犯罪の被害者の家族の物語です。こういった話はやるせなくなりますね。暴行、殺人、いったいどういう神経があれば、そんな残虐なことができるのか。私には全く理解ができません。
どうしたらなくせるんでしょうね。罪を犯す少年たちはこういう小説は読まないでしょうし。
厳罰化したからといって抑止力になるのでしょうか。人を殴る時に「これでこいつが死んでも懲役10年だからいいや」、とか「20年刑務所なんて嫌だから止めよう」なんて考える人がいるとは思えない。
私たちにできることは、周りにいる子ども達をやさしい子に育てること、そして子ども達が希望を失わないような社会にすることだと思います。そのためにも大人たちが生き生きと生活する姿を見せることが大事だと思います。


「ロシアン・トラップ」 永瀬隼介
悪徳警官もの、というらしいです。こういう警官が一人でもいたことがあるんですかね。
警官といえど同じ人間ですから、ずるい人弱い人、たくさんいるとは思いますけど。
淫行のニュースはしょっちゅう見ますしね。
警官の犯罪って年間どれくらいあるんでしょうね。
現実の警官には強くあってほしいものです。

主人公はしがない警官の妻なのですが、この人があまりにも場の流れに流されやすいのでなんとも感情移入できません。準主人公の日系ロシア人もスーパーマンだし。
私の好みではありませんでした。


「とどろきセブン」 乃南アサ
高木聖大シリーズの一編です。これは2作目に収録されているみたいです。
このシリーズも古本屋で見かけていましたが、音道貴子シリーズを先に読みたかったので未読です。
ご近所の老人プロ集団と関わるきっかけとなった話です。
新米警官の成長物語で、音道貴子に比べると話が軽いですね。もちろん事件には死人が出るのでそこは軽くないですけど。
老人との関わり方が宗田理の「ぼくら」シリーズを思い出させました。
主人公に関してはただのやんちゃな兄ちゃんではなく、ちょっと犯罪に対する感覚の鋭いようですね。
テレビドラマにしたらその瞬間がCGで描かれそうでした。
今後「とどろきセブン」のメンバーが活躍するのでしょうから、続編が読みたいですね。
作を重ねるごとにもっと特徴のある脇役が出てきて活躍しておもしろくなりそうな予感がプンプンします。

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